会社設立で失敗しないための「定款」の作り方。注意点から電子定款まで徹底解説

 

会社を設立する際には、法務局への登記申請が必要となりますが、その前提として「定款(ていかん)」の作成と認証が不可欠です。定款とは、会社の目的や組織、運営のルールなどを定めた会社の基本となるルールブックであり、株式会社の設立時には公証役場での認証が義務付けられています。

しかし、「何を書けばいいのか分からない」「書き方に決まりがあるのか」「電子定款と紙の定款、どちらを選べばいいのか」といった疑問や不安を持つ方は少なくありません。特に初めて会社を設立する方にとっては、定款の作成が最初のハードルとなるケースも多いでしょう。

定款は一度作成・認証されると、変更には手間と費用がかかるため、最初に正しく、かつ将来を見据えた内容にしておくことがとても重要です。また、電子定款を活用すれば、印紙税の節約(4万円)が可能になるといった、知っておきたい制度も存在します。

この記事では、会社設立時の定款に関して正確な知識と実務的なポイントを解説していきます。経営の第一歩を確実に踏み出すためにも、定款についての理解を深めておきましょう。

 

定款とは?会社設立における役割と重要性

定款(ていかん)とは、会社の目的や組織の仕組み、業務運営に関する基本的なルールを定めた書類であり、会社の“憲法”とも呼ばれる重要な書類です。株式会社を設立する際には、この定款を作成し、公証役場で認証を受けることが法律で義務付けられています(会社法第30条)。

定款には、大きく分けて「絶対的記載事項」、「相対的記載事項」、「任意的記載事項」があり、特に絶対的記載事項が欠けていると定款は無効となります。これには、「会社の目的」「商号(会社名)」「本店所在地」「設立に際して出資される財産の価額」「発起人の氏名または名称および住所」などが含まれます。

また、定款は会社の登記内容とも深く関係しており、登記事項の多くは定款に基づいて決定されるため、内容に誤りがあると登記そのものが受理されない可能性があります。

加えて、会社設立後も事業内容の追加や商号変更などがあるたびに、定款の変更が必要になるため、最初に作成する段階で将来を見越した設計が求められます。たとえば、将来的に新規事業を展開することを見据えて、目的欄に幅広い業務内容を記載しておくと、後々の変更手続きを省略できる場合があります。

このように、定款は単なる設立書類ではなく、会社の根幹を支える法的文書であることから、十分な理解と正確な内容で作成することが不可欠です。

 

定款に必ず記載すべき事項と任意的記載事項

定款には、会社法により必ず記載しなければならない項目(絶対的記載事項)と、記載することで効力が生じる項目(相対的記載事項)、任意で記載できる項目(任意的記載事項)があります。これらの内容を正しく理解し、漏れなく記載することが会社設立の第一歩です。

 

絶対的記載事項とは?

絶対的記載事項とは、会社法第27条に基づき、定款に必ず記載しなければならない項目で、これが欠けていると定款自体が無効となる恐れがあります。具体的には以下の5つです。

  • 1. 目的:会社が営む事業の内容
  • 2. 商号:会社の名称
  • 3. 本店の所在地:市区町村までの住所が必要
  • 4. 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 5. 発起人の氏名または名称および住所

これらの項目は、登記申請書にも反映されるため、内容の正確さが非常に重要です。また、事業目的が狭すぎると、将来的な事業拡大の妨げになるため、ある程度の幅を持たせた記載が推奨されます。

 

相対的記載事項・任意的記載事項の活用

相対的記載事項とは、定款に記載することで初めて法的効力を持つ事項です。代表的なものに以下が含まれます。

  • 株式の譲渡制限に関する定め
  • 株主総会の招集方法や開催場所
  • 役員の選任や任期に関する規定

任意的記載事項は、記載がなくても定款の効力に影響はありませんが、会社の独自ルールを明文化することで運営上のトラブルを防ぐ効果があります。たとえば、取締役会の有無、利益の配分方法、公告方法などが該当します。

特に中小企業では、株式の譲渡制限を設けることで、経営権の安定を図ることができます。また、公告方法として「官報に掲載する」と明記しておくと、金融機関等への信頼性向上にもつながります。

自社の将来像を見据えたうえで、必要な記載を漏れなく行うことが、長期的な会社運営において重要なポイントとなります。

 

定款作成の流れと必要書類

会社設立において定款の作成と認証は最初に行うべき重要な手続きです。このプロセスを正しく理解することで、スムーズな会社設立が実現します。以下では、定款作成から認証までの一連の流れと、準備すべき書類について詳しく解説します。

 

1. 基本情報の決定

まずは、以下のような会社の基本情報を整理・決定します。

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地(市区町村まで)
  • 事業目的(将来の展開も含めて)
  • 発起人の情報(氏名・住所)
  • 資本金の額・出資の内訳
  • 設立時の役員構成(取締役・代表者)

これらの情報は定款の内容や設立登記書類に直結するため、正確かつ将来を見据えた検討が必要です。

 

2. 定款の作成(文案作成)

会社法に基づいて、前述の絶対的記載事項を含む定款の文案を作成します。目的や公告方法、株式の譲渡制限、取締役の任期など、将来的な運営に関わる内容もここで定めます。法的に問題のない内容とするためにも、専門家のチェックを受けることが推奨されます

 

3. 定款の認証手続き(公証役場)

作成した定款は、公証役場で認証を受ける必要があります(株式会社の場合)。この認証を経なければ、定款は会社設立の法的根拠として効力を持ちません。電子定款による認証を行うことで、印紙税4万円が不要になるという大きなメリットがあります。

 

4. 必要書類の準備

定款認証に際しては、以下の書類を用意する必要があります。

  • 定款(紙または電子データ)
  • 発起人全員の印鑑証明書
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 委任状(代理人が申請する場合)

また、公証役場によっては事前予約やメールによる事前提出が求められることもあるため、訪問前に必ず確認することが重要です。

 

5. 定款認証後の対応

認証された定款は、会社設立の登記手続きに使用されます。原本を紛失しないように管理し、コピーも複数保管しておくと安心です。また、金融機関での口座開設や行政手続きでも必要となることがあるため、すぐに取り出せるようにしておきましょう。

 

電子定款と紙定款のメリット・デメリット

株式会社を設立する際には、作成した定款を公証役場で認証してもらう必要があります。この際、「紙定款」か「電子定款」のいずれかの形式を選ぶことになりますが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、内容を理解したうえで最適な方法を選択することが重要です。

 

電子定款のメリット

電子定款は、定款をPDFデータとして作成し、電子署名を付与したうえで公証役場に提出する方法です。最大のメリットは、定款への印紙税4万円が不要になる点にあります。会社設立において大きなコスト削減となるため、利用者が増えています。

さらに、電子定款はオンラインで提出可能なため、公証役場へ物理的に出向く必要がなく、時間と労力を節約できるのも大きな利点です。特に遠方の方や忙しい事業主にとっては、利便性の高い選択肢といえるでしょう。

 

電子定款のデメリット

一方で、電子定款には専用ソフトや電子証明書、ICカードリーダーの準備が必要という点がネックとなります。これらの初期費用や手続きにかかる労力を考慮すると、初めて会社を設立する方にとってはハードルが高く感じられることもあります。

また、電子署名に関する知識や、PDFデータの変換・送信といったITスキルがある程度求められるため、自力での対応に不安がある場合は、専門家のサポートを受けることが推奨されます。

 

紙定款を選ぶ場合のポイント

紙定款は、Wordなどで作成し、印刷したものに実印を押印して公証役場へ持参する方式です。手書きや印刷による対応が可能であり、電子的な準備が不要なため、パソコン操作に不慣れな方でも取り組みやすいというメリットがあります。

ただし、紙定款では4万円の収入印紙を貼付する必要があるため、費用面では電子定款に劣ります。したがって、「今すぐに会社を作りたいがITが苦手」という方には紙定款が有効ですが、コストを重視するなら電子定款の利用が推奨されます

どちらを選ぶにしても、自分の状況や予算、スキルに合った方式を選ぶことが大切です。最近では、電子定款の作成と認証までを一括で代行してくれるサービスも充実しており、専門家に依頼することでスムーズな対応が可能です。

 

定款の作り方でよくある失敗例と対策

定款は会社の基本ルールを定める非常に重要な書類である一方、初めて作成する方の多くが誤りやすいポイントも存在します。ここでは、よくある失敗例を具体的に挙げながら、その対策について解説します。

 

目的の範囲が狭すぎて事業拡大が難しくなる

事業目的を限定的に記載してしまうと、新しい事業を開始するたびに定款変更と登記手続きが必要になる可能性があります。例えば、当初は「飲食業」のみを目的としていたが、後に「食品販売」や「ケータリング業」などへ展開したくなった場合、それが定款に含まれていなければ変更が必要になります。

将来の事業展開を見越し、少し広めの表現で目的を設定することで、無駄な手続きを回避できます。ただし、あまりに広範囲な目的を記載すると、銀行口座開設や許認可取得の際に問題となることもあるため、バランスの取れた記載が重要です。

 

株式の譲渡制限の設定を誤り、株主トラブルに発展

中小企業では、経営権の安定を保つために株式の譲渡制限を定款に盛り込むことが一般的です。これを忘れると、株主が第三者に自由に株式を譲渡できることとなり、予期せぬ外部者が経営に関与するリスクが発生します。

「株式の譲渡には会社の承認を要する」といった文言を定款に明記することで、経営者の意図しない人間が株主となる事態を防ぐことが可能です。特に複数の発起人がいる場合や、将来的に相続が想定される場合には、早い段階でルールを整備しておくことが賢明です。

 

認証の手続きで書類不備が見つかりタイムロス

定款認証の際、誤字脱字や押印漏れ、必要書類の不足などによって、認証手続きがストップしてしまうケースも少なくありません。特に電子定款の場合は、PDFの形式や電子署名の付与漏れなど、形式上の不備がトラブルの原因となることもあります。

これらのミスを防ぐには、事前にチェックリストを活用し、公証役場に事前相談や下書きの確認を依頼することが有効です。また、行政書士など専門家に依頼することで、時間や手間を大幅に削減できます。

定款は会社設立の土台となる書類であるため、一つ一つの項目を慎重に作成し、見落としがないように進めることがポイントとなります。

 

定款変更の手続きと注意点

会社設立後も、事業の方向性や経営体制の変更に伴い、定款の内容を変更する必要が出てくることがあります。例えば、「事業目的の追加」「本店所在地の変更」「役員の人数や任期の変更」などが該当します。定款の変更は単純な書き換えではなく、法律で定められた正式な手続きを踏む必要があるため注意が必要です。

定款変更に必要な決議とは?

定款の変更には、原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法第466条)。これは、議決権のある株主の過半数が出席し、そのうちの3分の2以上の賛成によって成立します。通常の決議よりも厳しい要件であるため、事前に株主間での合意形成が不可欠です。

また、取締役会を設置している会社や、定款に特別な定めがある場合は、追加で取締役会の承認が必要となることもあります。会社の内部規定をしっかり確認した上で進めましょう。

登記手続きも必要になる場合がある

定款の変更内容が、登記事項(商号、本店所在地、目的、役員構成など)に関係する場合は、変更後2週間以内に法務局での登記申請が必要になります。これを怠ると、過料(罰金)を科される可能性があるため、必ず期限内に手続きを行うようにしてください。

登記の際には以下のような書類が必要になります:

  • 株主総会議事録
  • 変更後の定款(または定款変更箇所)
  • 登記申請書
  • 登録免許税の納付書

専門家への依頼でリスクを回避

定款変更は、会社法や登記制度の知識が求められるため、慣れていない方が自力で行うには難易度が高い手続きです。記載ミスや手続き漏れがあると、登記が受理されないだけでなく、会社の信用にも関わる可能性があります。

そのため、行政書士や司法書士などの専門家に依頼することで、安全かつ確実に手続きを進めることができます。費用は発生しますが、ミスによるリスクを回避し、時間と労力を節約できるメリットは大きいでしょう。

 

会社設立サポートを活用するメリット

会社設立時の定款作成や認証手続きは、法律や実務に関する専門知識が求められるため、慣れていない方にとっては大きな負担となります。そこで注目されているのが、行政書士や司法書士による設立サポートサービスの活用です。以下では、専門家に依頼することで得られる具体的なメリットを紹介します。

 

1. ミスのない定款作成が可能

定款には法的に定められた書式や内容があるため、自分だけで作成すると誤記や不足事項が発生しやすいものです。専門家に依頼することで、会社法に準拠した正確な定款を作成してもらえるため、公証役場での認証拒否リスクを回避できます。

 

2. 電子定款に対応しており印紙税が不要

行政書士などの設立サポートを利用すると、電子定款による認証手続きに対応してもらえるため、印紙税4万円の節約が可能です。電子定款の導入には専門的な準備が必要ですが、代行サービスなら手間をかけずにスムーズな対応が可能です。

 

3. 書類作成や提出も一括対応

定款作成以外にも、登記申請書・就任承諾書・払込証明書など多くの書類を用意しなければなりません。こうした書類の作成も専門家が代行してくれるため、設立にかかる時間と労力を大幅に削減できます。

 

4. 許認可や補助金のアドバイスが受けられることも

業種によっては、会社設立後に許認可の取得が必要となるケースがあります。専門家であれば、設立後の流れや注意点、補助金・助成金の活用方法についてもアドバイスを受けられるため、経営スタートのリスクを抑えられる点も大きなメリットです。

 

このように、専門家によるサポートを受けることで、正確かつ迅速に会社設立を完了できるだけでなく、経営に専念できる環境が整います。時間的・金銭的な無駄を避けるためにも、設立時点でのプロの活用は非常に有効です。

 

FAQ:定款作成に関するよくある質問

定款作成に際しては、多くの方が同じような疑問や不安を抱えます。ここでは、よくある質問とその回答を紹介します。実務上重要なポイントを押さえることで、ミスや手戻りを防ぐことができます。

Q1. 定款のテンプレートをそのまま使っても問題ないですか?

定款のテンプレートはインターネット上などで多く公開されていますが、そのまま使用するのは注意が必要です。会社の目的や体制、経営方針に合わない記載が含まれている場合があり、後のトラブルや変更手続きの原因となることがあります。

テンプレートをベースにしながらも、事業内容や将来の展望に合わせてカスタマイズすることが大切です。専門家に確認してもらうことで、リスクを最小限に抑えることができます。

 

Q2. 定款は英語で作成しても良いのですか?

会社法上、定款を英語で作成すること自体は禁止されていません。ただし、日本国内で登記や公証役場での認証を行うためには、日本語版の定款が必要です。そのため、英語定款を作成する場合でも、公的手続き用に日本語版を用意しておく必要があります。

外資系企業や海外の投資家と関係する企業では、社内用として英語定款を併用するケースもありますが、実務上は日本語での作成・運用が基本です。

 

Q3. 一度認証された定款は、変更できないのですか?

いいえ、定款は認証後であっても変更可能です。ただし、定款変更には株主総会の特別決議など、法的に定められた手続きを経る必要があります。また、事業目的や商号など、登記事項に関わる内容を変更した場合は、登記申請も必要になります。

定款の変更には時間と費用がかかるため、設立時点でできる限り将来を見越した記載をしておくことが望ましいです。

 

Q4. 電子定款に対応している公証役場は限られていますか?

現在、ほとんどの公証役場が電子定款に対応しています。ただし、一部の公証役場では事前予約が必要であったり、送信方法のルールが異なる場合があります。そのため、事前に希望する公証役場へ問い合わせを行い、必要書類や手続きの流れを確認しておくと安心です。

電子定款を初めて利用する場合や不安がある場合は、行政書士などの専門家に電子認証を代行してもらうのが確実です。

 

まとめ

定款は、会社設立時に必ず作成しなければならない法的効力を持つ基本ルールであり、会社の土台となる存在です。設立時だけでなく、将来の事業展開や経営の安定にも大きく関わるため、内容をよく検討し、正確に作成することが重要です。

とくに事業目的の記載範囲や株式の譲渡制限電子定款による印紙税の節約など、実務上のポイントを押さえることで、無駄な手間やコストを防ぐことができます。

また、定款には法的な形式や要件があるため、専門知識がない状態での自己作成にはリスクが伴います。行政書士や司法書士といった専門家のサポートを活用することで、安心かつスムーズに設立手続きを進めることができるでしょう。

定款は会社の憲法であり、未来の経営を守るための最初の一歩です。慎重に、そして的確に準備を進めていきましょう。

 

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